しかしながら、明らかに、上記のすべては進行中であり、この世界を破滅させるような問題について支配的な考え方であるダブルスタンダードが、この進行を助長している。
核兵器保有の疑惑により制裁を受けたが、実は保有していなかったと判明した国がある。このことですべての国が核兵器に対する共通の方針に従って行動しない限り、核兵器入手の企てを取り締まるのは不可能だとわかる。
広島と長崎の時には、核保有国は一カ国だったので、核の報復を気にせずに核兵器を使用することができた。
しかし核保有国の数はすぐに、2、3、4、5カ国と増加し、最近インドとパキスタンが核クラブの仲間入りをした。南アフリカ、イスラエルといった国々が核兵器を開発したと考えられている。しかしその後、南アフリカは模範的な態度で核保有を放棄し兵器工場を閉鎖した。他にも核兵器を保有している、またその途上であると考えられる国もある。
核兵器の保有を望んでいる国が数カ国あるが、もし核保有国が軍縮の義務を果たす意思を示すならそれらの国の野望が抑えられるのは明らかだ。核保有国がその義務を怠り続けるなら、非保有国は核兵器を持つことを思いとどまる義務はないと感じるだろう。
| 2) |
テロリストグループの勢力と活動範囲の拡大には目を見張るものがある。
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彼らは武器製造者、麻薬密輸業者、人道的価値などにはほとんど気に留めることもない者たちと結託していることがよくある。時には、利害関係のある組織や、国外在住者のグループや、紛争で利権を得ようとする者たちから資金提供を受けることもある。彼らの保有資産は数億ドルにものぼることがある。核兵器をどうしても手に入れたいと思っており、必要な核物質や知識、さらには遺棄された核兵器の中から核爆弾そのものを購入する資金力がある。
核爆弾そのものでないとしても核物質の入手は、テロリストたちにとって容易になる一方で、現実に手に入れてしまう日も近づいている。実際、近い将来テロリストのグループが核兵器を手に入れて威嚇しているというニュースで目を覚ます朝が来る可能性がないとは言えない。いったん手に入れてしまえば、彼らにはそれを使用するのに何の良心の呵責もないであろう。
現在の世界情勢は新たなテロリストを生み出している。目の前で愛する者を殺されたり、結婚式を爆撃されたり、子どもを爆弾で吹き飛ばされたり、友人や隣人を一度に何人も殺されたりした人たちである。そのような人たちが新たな暴力に駈りたてられ、暴力の連鎖がエスカレートすることになる。
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核兵器製造に必要な知識は保有国の安全保障組織内で僅かの専門家だけが持っていて外には出さない、という状態は終っている。
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情報技術(IT)の拡散に伴い、核兵器製造のノウハウは、必要な情報に侵入できる頭の良い大学生やハッカーにまで広まってしまったのである。私は以前この点についてある講演会で指摘し、講演の後で、出席していた一人の物理学教授に私が述べたことは大げさだろうかと聞いた。彼の答えは、核爆弾製造の基本知識を欲しながら入手できないような物理学の学生は良い成績に値しない、というものであった。このような危険な知識を非常に多くの人が
入手できるのは憂慮すべきことである。
| 4) |
今では解散してしまっている核プロジェクトにかつて従事していた科学者、特に旧ソ連の科学者、が大勢いる。 |
そのような科学者の中には、相応な代価を支払う用意があるいかなる組織や個人にでも自分の技術や専門知識に売り渡そうという者たちがいる。彼らに接触するのは簡単である。特に、この知識を熱望している国家や組織には自由になる豊富な資金があるからである。
世界にはこれらの科学者たちの名簿は存在しない。それは彼らが入っていた組織は完全な機密状態で機能していたためである。彼らの組織が解体した後となっては、彼らがどういう名前か、どこに居るか、何をしているか、誰にも分からない。
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核兵器製造に必要な材料、特に原子炉から出る副産物は、世界中での原子炉の増加に伴ってますます大量に入手できるようになっている。 |
現在世界中で440基の原子炉が総量で68,357トンのウランを使用し、これらの原子炉から出る使用済み核燃料は増えるばかりである。この使用済み核燃料に関しての記録はなく、望めば極めて簡単に入手できる。国際原子力機関(IAEA)にはこの核物質の正確な記録を持っておらず、密売は金になる商売なのである。世界各地にできている新しい原子炉の中には基準に満たない材質で建造されているものがあり、適正な管理監督を受けておらず、廃棄物質のち密で透明性のある保管量記録もとられていない。そのような原子炉を持つ国の中には、ウクライナ(15)、スロバキア(6)、ロシア(31)、インド(14)、パキスタン(2)、中国(15)、韓国(20)がある。440ヶ所から出る大量の廃棄物の明瞭な保管記録をとらせ、また、監視するには全世界の協力が不可欠なのは明らかである。
これらの核物質の多くは別の場所に移送されるが、その際に強奪される可能性には非常に現実味がある。それらの物質は鉄道、トラック、船舶、航空機などで輸送されるが、自国内の輸送においてでさえ通過経路にある関係官庁には何の連絡もない。そうして一般市民は、日常的に使う道路がこのような危険な輸送に使われていることを何も知らされていないままなのである。
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いくつかの国では、LOWC(警報即発射システム)と呼ばれるものに従って防衛システムを警戒態勢にしている。 |
即ち、そうした国々には前触れなく領空に入ってくる物体を感知し、危険に直ちに反応する装置があるということである。もし怪しい物体が領空に侵入し、核装置だと判断されると、LOWCが数秒とは言わないが、数分以内に反応することになっている。これは、核兵器を発射させるのに、国の責任を負う大統領や首相の決定が必要であるという神話を覆すものである。決定するのは機械であり、その決定は数分以内になされる。そして機械は間違いを犯すものである。単純な機械上のミスであるかもしれない。完璧な機械などないことをみなよく知っている。判断ミスもありうる。実際は全く無害であっても、予告なく入ってくる物体を間違って核兵器だと認識するかもしれない。実際にそのような例があった。ノルウェーの無害な観測衛星がロシア領空に入ったときに、ロシアのLOWCが危うく反応しかけた。発射前に8分間の猶予があるが、そのうち6分間衛星を敵機だとみなしていた。発射までの時間がほとんどなくなりかけたとき、エラーが見つかったのは幸運な偶然であった。
もし誤った反応により核兵器が発射されれば、それは戦争の開始を意味する。このようにして発射された核兵器は、核攻撃だとみなされ、核兵器を受けた側のミサイルシステムが自動的に核兵器を発射し、報復する。そして核の応酬となる。
空中には何らかの理由で多くの物体が飛んでおり、そうした物体が核保有国の領空に誤って侵入する可能性は常に存在する。そして意図せずとも戦争が起こる危険性は高まる一方である。
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核の事故もいつでも起こりうる。過去に数多くの事故があった。 |
何万という核兵器が世界中に存在するという事実を考えれば、その危険は重大である。過去に起こった多くの事故は一般の人々にはほとんど知られていない。ここにいくつか事例を挙げる。
| ・1950年 8月 5日 |
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核分裂性核種のない核兵器を搭載したB29が米国で墜落炎上した。核兵器が墜落15分後に爆発し、18名が死亡、60名が負傷した。
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・1961年 1月24日 |
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B52がノースキャロライナ上空で火災を起こし、誤って2発の水爆を落とした。水爆は爆発しなかった。
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・1963年 4月10日 |
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米原子力潜水艦スレッシャー号がボストン港で沈没、129名が死亡。これは原子力潜水艦事故としては世界で最初の大惨事である。
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・1965年 8月19日 |
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米潜水艦発射弾道ミサイルトライデントが米国で火災、53名が死亡した。
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・1966年 1月17日 |
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水爆を搭載したB52がスペイン上空を飛行中に墜落。放射能汚染を引き起こした。
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・1969年 |
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中国の原子爆弾工場で事故
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・1970年 |
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ウエストゴーリキーの原子力潜水艦工場で爆発。数名が死亡、放射能 汚染を引き起こした。 |
・1976年 10月25日 |
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バルト海のソビエト海軍基地で地下核爆発。40名以上が死亡した。
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・1978年 1月29日 |
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ソビエトの原子力衛星がカナダ北東部の湖に墜落。放射能汚染を引き起こした。
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・1979年 7月 6日 |
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ムルロア環礁でのフランスの核実験で爆発事故が発生した。 |
・1988年 9月28日 |
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28年間で30件の重大事故がサバンナ川核兵器工場で起こっていたことが判明した。
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・1989年 4月 9日
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ソビエトの原子力潜水艦がノルウェー沖で炎上、沈没。42名が死亡した。
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これらは核の事故の長いリストの一部に過ぎない。核関連事業が存在する限り、こうした事故は起こり続けるであろう。どんな事故でも連鎖的に危険な結果を引き起こす可能性があり、それは誰にも予測できない。
| 8) |
世界は過去60年、何度も核戦争の危機に直面した。 |
核戦争寸前まで行ったことが何度となくありながら、世界が核戦争から救われたのは幸運なアクシデントが続いたために過ぎない。一旦爆弾が発射されると後戻りはできず、他の核保有国を巻き込んでの争いにエスカレートするだけである。そして全面的核戦争となる。
以下にその例を挙げる。
| ・1948年 |
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ベルリンの壁の建設
(訳者注 : 1961年と思われる)
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・1950年 |
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朝鮮戦争の勃発
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・1956年 |
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スエズ危機
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・1958年 |
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台湾海峡危機
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・1962年 |
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キューバミサイル危機
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・1968年
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北朝鮮による米情報収集艦プエブロ号のだ捕
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キューバミサイル危機が、ソビエト連邦とアメリカ二大国の正面切った対立であったということを誰もが知っている。現在それを振り返ってみると、予測された結末は衝突でしかなく、戦争回避に至る可能性は非常に低いものであった、という結論は避けられないだろう。戦争回避に至ったことは、世界にとって非常な幸運であった。
| 9) |
核の危険が増加しているもう一つの理由は、世界中の小規模な戦争の数が増加しているということにある。
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この小冊子を作っている最中にも、およそ40もの紛争が世界中で進行中である。そうした紛争の中には、他国を巻き込む可能性があるものがある。そのような敵対状況においては、常に核保有国を巻き込む可能性があり、いつそのようなことが起こるか誰にもわからない。ほとんどすべての一見小さな対立には、当事国の後ろで動いている大国の利害関係がある。そして、大国が介入すると、核兵器使用への危機はさらに高まるのである。
近年、国際法が無視される傾向がある。国際法を無視できる立場にあると思っている人々の利己的都合次第で国際法が無視される。安全保障理事会の常任理事国二か国によるイラク侵攻は、このような手段に訴えることを禁止する国際法の下で培われてきたいくつかのルールが無視された一つの例である。安全保障理事会の承認を得ない武力行使・先制攻撃・一方的な行為の禁止、どの国も一方的に他国の統治者の座を奪う権利を持たないという原則、歴史的建造物は保護されるべきであるという原則、これらは全て国際法で十分に確立されており、国連憲章自体にうたわれているものもある。何百万人もの尊い犠牲の上に作りあげられたものであり、尊重されねばならない。
とりわけ大国によって国際法が無視される場合は、違法な武力行使や国際法を軽視しようとする人々に、本来ならば作用する歯止めが利かなくなってしまう。
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核の危険性が増大するもう一つの理由は、富める国と貧しい国との大きなギャップであり、このギャップは拡大するばかりだ。
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基本的な生活必需品ですら入手できず絶望の淵にある国々は数多い。そのような国、あるいはその中の身勝手なグループが、特権の中枢部を自分たちの困窮の原因と見なし、攻撃を開始しようとする時が来るかもしれない。何億もの人々が貧困ラインを下回る生活を送り、何百万もの失われなくてもよい命が失われ続けている。これは、極度の人的・物的不足、富める国々の無関心、そして多国籍企業が貧しい国で操業し、実質的に彼らから富を搾り取っているためである。
この緊急課題の一つである地球規模の問題に対しては現在十分な注意は向けられておらず、テロリストや勝手に制裁を加えようと準備する人々に、十分な理由付けを与えている。
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核兵器の改良に向けた研究が世界中で進められていることも忘れてはならない。
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核兵器は、絶えずより正確に、扱いやすく、配備しやすくなっている。ますます持ち運びやすくなり、旅行カバンに入れたり身につけたりできるほど小型化する日もそう遠くはない。この段階に達すれば、
一人の自爆者が
そして自爆者が不足することはないが
世界を相手に金をまきあげることも可能である。
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また覚えておくべきは、今後どのような紛争であっても核兵器が使用されるならば、その応酬がありえなかったヒロシマ、ナガサキではすまないということだ。
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どこであれ次に核兵器が用いられれば、核兵器による反撃を招き、さらなる報復、核の応酬、核の冬、そして現存する有機生物の絶滅すら予測される恐ろしいシナリオへとつながるのだ。
核の在庫リストを作り、備蓄し、監視することは、非常に多くの人々が核兵器を欲しがる世の中において、ますます難しくなっている。旧ソビエト連邦で
武器庫が隔離された場所にあったように、核保有国の保管基地には首都から遠く離れているものがある。同様に核物質は在庫を調べられることなく、製造され続けている。核の密輸は身に迫る危険となった。核の密輸を阻止し、予防できる唯一の方法は、全ての国家(核保有国であれ非核保有国であれ)の同意のもと、核物質や核兵器製造のノウハウの監視と取締を行うことである。これは核保有国と非核保有国が、ともに安全対策に取り組まなければ実現しえない。そして全ての国の連帯を可能にするには、核保有国・非核保有国双方による相手の立場にたった自由で率直な意見交換や、相互コミットメントが欠かせない。このことは核兵器全廃にむけた取り組みに誠意がみられない現在の政策に核保有国が固執する限り実現しえない。
| 15) |
捨て身の任務を遂行する自爆テロリストの数が増加しているのは、現代の現象である。 |
昨今の国際的な出来事や対外政策の結果、彼らの存在は着実に大きくなっている。
盲信的な自爆者は捨て身で突っ走り、単独行動をとるため人目につきにくい。彼らは自分たちの価値観や愛する人々、そして育んできた願いが、暴力行為によって破壊されるという状況の中で生み出される。彼らは、自分たちへの不公平感を痛切に感じて献身の精神に燃え憎しみに突き動かされている人々であり、彼ら自身へ、そして数千の罪のない犠牲者にもたらされる結果も意に介さない。彼らには結果を見据え考えを軟化させるだけの情報がない。今日の世界情勢は、かつてないほどに彼らの存在感を増大させている。
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今まで述べてきたことすべては、2005年5月にニューヨークの国連本部で開かれる核不拡散条約の5年ごとの再検討会議に向けて、重要かつ緊急を要する問題となってきた。この再検討会議は、全世界にとって上記に述べてきた危険性を再び考えなおす最良の機会となる。またそうすることで今までのどの再検討会議にも増して、今回の再検討会議を重要なものと位置付けることとなるのである。この機会が用いられなければ、核のもたらす危険性の増大を止めるための建設的な決定の最後のチャンスを逃してしまうことになるかもしれない。
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核不拡散条約は、ある意味で核保有国と非保有国との駆け引きであった。保有国は非保有国に核兵器を持たせない、しかしそのかわりに最終的には核兵器を廃絶するという見地に立って、自らの軍備を段階的に削減する有効な手段を講ずると説得してきた。保有国はこの条約の下での義務に非保有国を縛ってきたが、自分達が果たすべき義務の部分に関しては怠ってきた。このことは非保有国には受け入れがたく、非保有国の核兵器保有願望を抑えられなくしている。そしてそれが新たなる危険性を増幅させているのである。
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核保有国は、自分達が現在取っている政策によって、核使用の脅威にさらされる日を早めていることに気づくべきである。核保有国の国民が、このような近視眼的な視野に立った政策によって、自分達の町や村の何十万人もの命を奪うことになるかもしれないと気づけば、NPTで定められた自国の果たすべき義務を遵守するように、自国の政府に有効な圧力をかけることができるだろう。
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この小冊子の目的の一つは、この危険性がどれほど深刻なものであるかを十分わかっていない国々の、平和を愛する、善良な大多数の人々にこの現実を分かっていただこうとするものである。
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このような理由から、核の脅威は時間的にも地理的にも我々から遠く離れたところの問題ではなく、すぐ身近な、そして日々増大している脅威なのである。独り善がりと無関心は核の脅威を一層加速させ、ますます脅威を我々の身近に迫らせる大きな要因となる。
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この問題は保有国、非保有国を問わず、すべての国が真摯に取り組んでいかなければ解決されることはない。全人類のための法である国際法の基本原則は、取られるべき措置に信頼性があるならば遵守される必要がある。
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もし核保有国と非保有国が力を結集し、この残酷な兵器を地上から追放する決意を共にするなら、拡散をコントロールし、保有数を管理し、ならず者を追い詰め、この地球をより安全な場所にすることができるだろう。逆にもし保有国が二元的な法体制(一方は自分達「持てる者」、もう一方はそれ以外の「持たざる者」)を主張するなら、拡散は続き、ますますこの兵器を手に入れようとする輩は増え、無責任な者どもが核の引き金を引くことになるであろう。
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いったん事が起こると、それは次々と拡大していき、核の応酬はすべての市民やすべての秩序ある社会を消滅させてしまう可能性がある。またすべての生命体自体を壊滅さてしまうかもしれない。
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子ども達は素直な目で、問題の複雑な部分ではなく、この兵器の残酷さを見ている。ある6歳の少年が言ったように、「アダムが最初の人間だけど、僕は最後の人間にはなりたくない。」子どもの目にも明らかなように、この兵器の危険性はもっと広く認識されるべきである。
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これまでのところ、核不拡散条約は人類に対するこのような脅威の根絶という最終目標に向けた我々の重要なステップである。我々は皆、真摯にしかも強い決意を持って、この目標に向かわねばならない。ある壁に以下のように書かれている。
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必要な材料の蓄積が増え、必要な知識取得の可能性が増し、必要な資金を手に入れ、使用しかねない者の数が増え、その者達を駆り立てる怒りや不満が増大し、偶発的な使用の危険性が増し、世界中で紛争が増えていく、そして核の危機は増幅するのである。
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我々の幸運がどれくらい続くのかは誰にもわからない。もしすべての人類がこの兵器の廃絶のために共に行動を起こさなければ、この兵器は単独で全人類を壊滅してしまうこともありうるのだ。
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